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トヨタイムスでわかる企業情報発信のあるべき姿

以前トヨタがオウンメディアで発信する「トヨタイムス」は、メディアのあり方を根底から覆す可能性を持っているという主旨でブログに書きました。

同時に新聞やテレビといった既存メディアは消え去る運命にあると確信を持ちました。既存メディアの社会的存在価値はもう無くなってきています。企業、個人を問わずいつでも誰でもほとんどコストをかけずに動画を制作し、ネット配信やライブ中継もできます。同じようにSNSやウェブサイトで情報発信で集客しネット上でビジネスが可能になっています。一方、既存メディアは情報収集力の点でも、コンテンツ企画力の点でも、画像や記事の質の点でも、もはや企業や個人が発信する情報価値という点で勝てなくなってきています。外部の世界が見えていません。トヨタイムスを単なるトヨタ自動車のウェブサイトの情報発信の一つだと思っていたらおめでたいと言わざるを得ません。

その結果、新聞の購読者は激減し巨大赤字を出してしまいました。テレビもスポンサーを確保するのが難しくなって広告収入が同じく減少し赤字に落ち込みました。今までタダみたいな電波料で暴利を貪っていたテレビ局は、この外部環境の変化を正しく理解できていないのです。新聞やテレビだけでなくメディア業界全体を牛耳っていた広告代理店もこのままでは生き残ることが厳しくなっているのです。

私自身、コロナ以降ほとんどテレビも新聞を見なくなりました。一番の理由は発信情報の質の低下です。新聞は国民が知りたい情報を正確に発信するのではなく、自分たちの思想信条を一方的に押し付けるプロパガンダ記事ばかりで見る気を失いました。テレビに至っては貧弱な企画力でコスト圧迫のため、低コストで見識の低いタレントばかり使っています。2時間も3時間もスペシャル番組でくだらない素人コメントやグルメレポの構成で、「尺撮れ高」という意味のない業界用語を使って、単位時間あたりの制作費を圧縮したコンテンツばかりを垂れ流しています。

新聞もテレビも朝から晩までずっとコロナと政府批判ばかりやっているだけです。その内容も非常に勝手な解釈で偏向していたり、他人批判ばかりで自分たちは何が貢献できるのかという発信がありません。なるほどと思うことがほとんどなくなってきたため、見る気を失ってしなったというのが正直なところです。

トヨタイムスが意味するところをメディア業界はわからない

既存メディア自身の質低下と双方向対応が弱いという技術革新の流れに乗れない構造的欠陥のため、自分たちの立ち位置が見えていない結果が赤字につながっています。その事実に気づこうが気づかなかろうが、今のメディアは10年以内には消え去るか、全く形を変えてしまうことになります。10年先に紙媒体による情報はどういう位置づけになっているのか、放送による情報発信にお金を出したいという企業がどれだけ残っているのかということを想像できるでしょうか。ネットでは見たい情報ソースを簡単に検索することができます。いつでもどこでもアクセスできるネットの力に紙媒体と放送メディアは反転攻勢できるでしょうか。一部HuluやAbemaのようにオンエア番組を再放送的に活用しているところもありますがどうでしょうか。なぜ視聴者はサブスク費用を払ってでもNetflixやAmazon Primeの方を見るのでしょうか。

人々が求める上質のコンテンツはますます必要とされるでしょう。しかしそれを届ける媒体や発信者は最早既存のメディア企業ではなく、どんどん個々の企業や個人にシフトしていく姿になるでしょう。実際その動きは現実に加速しています。その一つの姿を「トヨタイムス」に見ることができるのです。

今まで企業や個人はウェブサイトやブログを立ち上げて文字情報や静止画での情報発信を行ってきました。そして、SNSと動画プラットフォームが一気に発達し、企業と個人が直接メディアを介さずにつながるようになりました。個人同士のネットワーク化がオンラインサロンで形成され、企業と個人のつながりもデジタルマーケティングで加速しました。当然、広告宣伝の主体も費用対効果がわかりにくく、企業としてはぼったくりに近い多額の広告費を既存メディアに払うよりも、ピンポイントでターゲット広告が打てるインターネット広告にシフトするのは当然の流れです。

「トヨタイムス」は単なるトヨタのウェブサイトの一つのコーナー記事や動画発信ではありません。自分たちの考え方をメディアのバイアスをかけずに直接消費者へ届けることにより、顧客の囲い込みとともにブランド価値を上げていくプラットフォームです。「トヨタイムス」自体もテレビCMで宣伝しています。しかし「トヨタイムス」のテレビCMでは新車販売の広告宣伝は行いません。あくまでオウンメディアである「トヨタイムス」への誘導を図るためのものです。

そして誘導した「トヨタイムス」を見てみると非常に興味深いことがあります。全てではありませんが、大半が豊田章夫社長自身による語りやトヨタが目指す姿、社員の思いなどをストレートに動画で伝えています。しかも単なる記者会見や展示会、メディアイベントの様子を動画で発信しているだけでなく、例えば鈴木自動車の鈴木会長と豊田社長との会談も発信しています。この会談動画を見てお二人の人柄に触れて感銘を受けました。

この動画を「トヨタイムス」のウェブサイトだけにアップするのではなく、YouTubeで「トヨタイムスチャネル」にも同時に発信しています。もうすでに246本の動画をYouTubeにアップしています。チャネル登録者数はまだ14万人そこそこでまだ十分に浸透しているとはいえませんが、会社や経営者の考え方、思いをネットでどんどん発信することの意味は、将来的に企業自身が消費者と双方向のコミュニケーションが可能なメディアを持つということと同じことになります。

実際、化粧品会社のDHCは自社でインターネット放送局を持ち、低コストで独自の視点から月曜から金曜まで毎朝2時間の虎ノ門ニュースを始め、他のニュース番組の制作を行って発信しています。内容的には既存メディアとは対極的なため、いろいろと批判や外部からの圧力を受けているようですが、会社として信念や考え方にそって自ら番組を作って発信する姿勢は評価できます。その結果、ワイドショウでの一方的な価値観に惑わされることなく、多様な観点から世の中の動きを理解できるという支持者が増えていることも、既存メディアの凋落につながっているように思います。

トヨタやDHCなどの例からわかるように、今後の企業にとっての広報、PRのあり方は今後劇的に変わっていくでしょう。メディアに高い宣伝費を払い続けるのか、今までのように既存メディアに良い記事を書いてもらうような広報活動を続けるほうが良いのか、それとも自ら直接ネットメディアを立ち上げて情報発信を行うのが良いのか。。。。答えは明らかです。

しかし、残念なことにほとんどの企業はトップ自身のネットでの情報発信力が極めて弱いです。社内や経済団体でどんなに立派なことを話す経営者であったとしても、自ら情報を直接顧客に語れない、そのプラットフォームを持っていないトップは失格といっても過言ではない時代がもうやってきています。大企業の経営者はたまにインタビュー記事を新聞に載せてもらって喜んでいる人が多いのですが、豊田章夫社長のように直接ネットを通じて自分の思いを消費者に届くような発信をしている人はあまり見かけません。残念ながら電機業界は?・・・・情けないです。