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ZOOMオンライン研修で人が育つのか

コロナショックは人材育成のスタイルにも変革の波が押し寄せてきています。3月以降、企業研修は軒並み中止や無期限延期となっています。外出を8割削減する目標に向けて、事務や営業などを中心にテレワークによる在宅勤務が急拡大しています。極力出社せずに仕事を回すオンラインの業務に切り替わり、会社組織構造の地殻変動が起きている最中です。毎朝オフィスに出社して部門ごとに顔を合わせ、朝会などで業務の打ち合わせを行うのが当たり前でした。細分化された部課係の組織単位で業績目標達成に向かって管理統制するとともに、個人、組織の成長を実現することで、会社全体の成長発展につなげてきた経営サイクルのパターンが通用しなくなっています。

テレワークが当たり前の世界に変わり、名刺交換もスマホでというスタイルなど、ほとんどの人にとってはあまりにも急激な変化で到底ついていけていないのではないでしょうか。テレワークによってオフィスに来る必要がなくなったということは、既存の部課単位の業務を単に在宅でできるようにオンライン化したという変化にはとどまりません。今までの組織文化を根底から覆していく震度です。その方が生産性が遥かに高いので当然の流れかも知れませんが、会社経営における組織文化の大革命が同時進行で起きてきます。

求められる人材が変わる

既存の会社組織において、毎日人と人が直接会ってコミュニケーションを取りながら、最適解のコンセンサスを形成し、トップダウンで経営判断をしながら進めてきた経営のあり方が変わるのです。組織のメンバーとはZOOMの画面を通してしか出会うのが普通になります。もちろん全てZOOMで処理できることばかりではないので、時々出社して面と向かってコミュニケーションを図る必要がありますが、その頻度は極端に減ってきます。そうなりますと仕事の進め方も根底から変化しますので、既存の部課単位は非効率かつ無駄な組織体制ということが顕著になります。テレワークに適した組織は、人を中心としたものから、業務処理を中心としたものに組織変更されてくる流れが出てきます。極端な場合正社員はいらなくなり、業務のプロを活用してオンラインで業務委託する仕事の進め方に激変してきます。定期採用の新卒を受け入れる意味すらなくなってきます。

そうなりますと、今後評価され求められる人材は大きく変化していきます。営業部門で業績ナンバーワンの資質が変わります。結果を出せる能力が全く異なったものになります。とにかく人と人が会うことが避けられる時代になってしまったのです。今まで人間関係づくりに長けていて、コミュニケーション能力でクライアントの気持ちに食い込めるセールスが業績を上げていた面もあったと思いますが、今後はクライアントが求める価値にいかに的確でタイムリーな情報を届けられるか、そのためのITを駆使した分析力と提案力が問われるのです。足よりITスキルが評価されるのが営業の世界になります。一度も顧客に会わずに契約を取れるセールス能力なんて過去にはあり得なかったことです。

果たしてオンラインで人が育つのか

会社経営において最も大事なのは次世代に承継できる人材をいかに育てるかであると考えます。事業に必要な人材は、いわゆる時給で評価処遇できる業務を担当するスタッフ人材と、新たな付加価値を創造し組織をマネジメントして経営資源を最大に発揮する経営人材に二極分化します。その人材を育成するには経営人材だけでも不十分で、スタッフ人材の育成にも力を入れることにより、全体の人材のレベルアップを図ることにより、他社より競争力ある商品・サービスを開発し提供していくことに繋がります。それだけではなく、企業自身が社会発展に貢献する公的存在である視点に立てば、社会発展に資する人材を輩出し、かつ事業を次世代につなぐ人材基盤を残すことは企業の社会的責任でもあります。

企業は規模にかかわらず人づくりに投資をしてきました。職種別に、階層別に様々な研修を社員に提供し、職場においてもOJTで上司が仕事を通じて後進に仕事や社会の基本を教え、育った人材がさらに次の世代の後輩を指導教育していくという循環が組織力強化には必要で、人を大事にして育てていく企業文化の醸成が成長発展の基礎となってきました。

コロナショックによって、企業での集合研修が3密のリスクがあるとともに、研修のために出勤させること自体が外出頻度を高めるため、ほとんどの企業研修が凍結されてしまっています。また、テレワークが常態化していくと、上司が直接面と向かって指導できるOJTも満足に行えなくなり、職場内でのコミュニケーションも希薄になります。飲み会も完全停止ですから、飲食店の経営危機とともに、一般の企業においても組織文化や人材育成危機に陥ることも考えなければなりません。

会社の人事部門も必死になって人事業務のオンライン化とともに、オンライン研修も導入を試行的に進めるところが多くなっています。私も研修講師として提供していた研修プログラムをZOOM対応も可能にしています。ただ、いろいろやってみますと、テレワークではチャットワークやオンライン会議などの活用は一気に進むと思われますし、大学などの講義形式の研修はオンラインで十分代替え可能です。ZOOMではファイル共有やブレイクアウトルームなどの機能である程度カバーできます。ただ研修としては非常に無機質な感じなのです。運営の仕方によってある程度人材育成の効果が出るとは思いますが、やはり講師と受講者とのフェイス・トウ・フェイスのコミュニケーションや、受講者間でのグループワークによる気づき効果などはリアル研修には到底及びません。研修の臨場感というか真剣勝負の感覚が希薄なのです。

ZOOM研修では知識習得には非常に便利で効率面の効果が上げられます。しかし、例えばリアルの合宿研修など、学びの場を通じた受講生間の直接コミュニケーションで得られる気づき効果は、オンライン研修ではほとんど届きません。もし、企業研修の全てをオンラインやE-LEARNINGに切り替えたとしたら、また職場でのOJTやコミュニケーションがなくなったとしたら、人の気持ちがわからない経営人材ばかりを育ててしまうのではないかと非常に恐ろしい気がします。

アフターコロナ時代の新しい人材育成のあり方

コロナショックにって価値観が根底から覆ります。人と人が会うことが悪というような考え方が一般的になります。オンライン化が当然の流れです。しかし、人を育てるというのは単に知識を与えるだけが手段ではありません。ITが人を育てるのではないのです。知識だけで経営が実践できないのは企業経営者なら皆さんわかっています。

結論としては、多くの方にとっては異論があるかも知れませんが、人材育成は全てオンラインに切り替えることは不可能であることを前提に考えたいと思います。感染リスク対策に十分配慮しながらも、オンライン研修とリアル研修を組み合わせていく方法を検討するべきであると考えます。ある程度の知識付与型研修コンテンツはオンラインにシフトし、議論を通じ気づきを得てグループで意思決定を積み上げていく経営感覚を養成する研修部分は、リアル研修でファシリテートしていく(もちろん感染対策を実施して)ことが重要です。人の心がわかる人材、リーダーシップスキルを開発するには、ロールプレイやケース研究のグループディスカッションがどうしても必要で、これらはZOOMではまず無理であると考えています。

ではどうやったらリアル研修を実施できるか、そのやり方については個別に相談をしていただければと思います。