企業経営2025年問題の深刻度
日本企業の2025年問題って聞かれたことはありませんか? この問題は日本経済にとって極めて深刻です。
今まだ好景気が続き、人不足が深刻という状況で、その上に働き方改革で残業もさせにくくなってきて、仕事は断らなければやっていけないという問題に頭を抱えている企業が多いという認識が一般的です。しかし、おそらくオリンピック開催が一段落する来年ぐらいから、一気に景気が冷え込み、日本経済の足腰が揺らいでくるのではないかという恐怖感を肌感覚としてじわじわと感じるようになってきました。
ここに示したグラフは、1995年から5年ごとに日本企業の経営者年齢の分布を表したものです。このグラフを見て、私は一気に暗澹たる気持ちになりました。単に少子高齢化の一つの分析ではありません。この20年間で企業経営者の年齢のピークは19年そのまま高齢シフトしているのです。日本企業の従業員の平均年齢がどんどん高齢化して活力がなくなっているというのは実感でもありますが、一方で経営者自身もそのまま高齢化シフトしています。少子化だから当然じゃないかと思われるのですが、このグラフからわかる深刻な事態として二つあります。
① 事業承継がほとんど進んでいない
日本の大企業は全体でわずか1万1千社しかありません。2014年時点での企業数は381万社で、いわゆる中小企業は380万社あります。大企業の経営者は株主の意思も入るため、経営陣の若返りも牽制機能として働きますし、何十年も経営承継がされないということはまずありません。しかし、中小企業のほとんどは同族経営体であり、次世代への家族内承継がうまく働かないと事業承継が進みません。この20年ほとんど承継が進んでいないことをグラフが示していますが、これはそもそも子供の数が減っていることもあり、会社を継いでくれる人が家族にもおらず、かといってM&Aで事業売却をして雇用を守ることすらも進んでいないのです。
② 若い世代による新しい企業がほとんど起業されていない
事業承継問題の要因よりも経営者の高齢化の要因が大きいとは思いますが、一方で多くの労働者は大企業の社員として安住する傾向が強く、一部のIT系企業を除き、若い人が起業して産業を活性化する活力に欠けた結果、企業の数が減り、若い経営者がほとんど輩出されていないことも言えるのです。
2025年問題の本質とは
2015年時点での経営者のピークは66歳でした。これは2014年時点の法人・個人事業者数381万社を基準に調査されています。実は2014年の381万社も、ずっと減少傾向が続いているのです。1999年時点では企業数は484万社あったのです。それが2001年には469万社、2004年に433万社、2006年に420万社、そして2012年には385万社と減少してきています。しかしこの減少は倒産でつぶれたことが要因となっているのは年1万社もありません。倒産件数自体減ってきており、企業数の減少は事業不振による事業撤退・倒産ではなく、自主「休業・廃業・解散」が理由です。
この休廃業の要因は、まさに少子化による人不足にあります。経営者の承継人材がいないことと、労働者を確保できないため、やむを得ず事業を中止せざるを得なくなっているためで、それが年々深刻化してきているのです。まだ多くの人は、人が足らないから外国人を活用して補完したり、働き方改革で女性や高齢者が働きやすい環境を整える努力をやっているのだという意識しか持っていないように思います。
しかし・・・事態はもっと深刻なのです! 2025年ぐらいから日本経済は、少子化によって坂道を転げ落ちるように転落していく危険性が高まってきているのです。
このグラフを中小企業庁がまとめたとき、10年後の2025年にはどうなるかについて、アンケートとともに考察をしました。それは恐ろしい世界が待っているというものでした。2025年とはいわゆる団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる年にあたります。この数の多い団塊の高齢者を支え切れるのかどうか、年金問題は大変になるなというぐらいの認識を国民の多くは感じていました。しかし、問題の深刻さは年金どころではなく、日本経済が立ちいかなくなる世界が想定されているのです。
2015年時点で380万社の中小企業経営者の平均引退年齢の統計を取ったところ70歳ということがわかりました。ある意味まあ70歳ぐらいが限界だろうというのは想定できます。どんどん右肩上がりで経営者が高齢化して66歳にピークがシフトしてきましたが、10年度の2025年には絶対に経営者年齢は76歳にはなるはずはありません。これら経営者は全員後期高齢者になるのです。ということは、70歳前後までに誰か後継者を探すか、M&Aで売却して第三者に承継させるか、それとも・・・廃業するかしかないのです。このまま推移すると、2025年までに70歳以上の引退適齢期を超える経営者は、なんと245万人、つまり245万社が事業承継か売却か廃業を迫られるのです。これは全企業数の64%にあたります。しかも、この245万社のうち、2015年時点で後継者が未定という企業は約半分の127万社もあることがわかったのです。
そして今、2019年です。このままでいくと、2015年と比較して2025年までに127万社が廃業してしまい254万社まで減少してしまうのです。10年で127万社の日本企業が消える!のです。この影響は既に中小企業庁が分析しており、なんと650万人が職を失い、22兆円のGDPが落ち込むショッキングな世界がほぼ見えています。日本企業数は過去最高を記録したのが1989年の657万社です。既にピークの6割を割っており、2025年には半分以下にまで縮小するのです。
まさしく大廃業時代が現在進行中です。最新の企業数調査によれば、2016年時点での企業数が公表されています。2014年の381万社からわずか2年で23万社が廃業し、2016年は358万社にまで減少しています。おそらく経営者の平均年齢はほぼ70歳に到達しているのではないでしょうか。あとは廃業が加速していくしかありません、まず間違いなく127万社の廃業は現実のものとなる状況が見えています。
このまま指を咥えているだけか
いくら働き方改革や外国人活用の促進を政府が旗を振ったとしてもとても追いつきません。後継者人材、労働人材不足の影響が深刻化し、いくら生産性を高めて乗り切ろうとしても、高齢化のゴールとして廃業企業が増えていくとGDPは確実に失われ、経済は停滞、大不況を避けることは難しいと思います。
では日本企業は、日本人はどうすれば良いのでしょうか? もっと働け!・・いやもっと子供を増やせ!・・いやもっと外国人移民社会へ!・・・どれもほとんど難しい問題ばかりです。ただはっきりしていることがあります。このまま日本企業の社員が日本で働いているだけでは座して死を待つしかないのです。もう既に終身雇用システムは崩壊しています。新入社員の一括採用も間もなく終わらざるを得なくなっています。経営人材も、労働者も、そして市場自体も、日本のリソースは急減していることに気づかねばなりません。
何とかするには、私としては3つの処方箋があると考えています。
① 経営資源の源泉を海外に求め海外展開を基盤にした経営に変革すること
② 大企業が抱えて有効に活用できていない人材を自立化させ経営能力を中小企業に還元すること
③ 起業優遇税制とM&Aで雇用継続できた企業に対する優遇支援政策で若い経営者が活躍できる場を作ること
事業を廃業するしか考えていない企業への支援よりも、その事業を次世代につなぐことができるようにあらゆる支援政策を動員するべきです。この3つの処方箋の具体案について、次回以降のブログで持論を述べたいと思います。
でも、この恐ろしい未来。いくら見たくなくても、直視しなくては私たちの子供たちに富をつなげられないのです。今の世代として年金が保証されて逃げ切ればいいと考えているようでは、あまりにも次世代に対して無責任な考え方ではないかと痛感するこの頃です。社会保険の半分を拠出している企業が廃業加速していけば、もう年金原資も早晩枯渇することは間違いないと思います。