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世の中から駆逐される書店のビジネスモデル

AIの進化によって世の中の古いビジネスモデルはどんどん立ちいかなくなっています。以前から街の書店がどんどん減っているというのは実感そのものです。今まで少し大きなターミナルの近くやちょっとした商店街にも書店は必ずありました。

ところが最近改めて街の商店を見て、以前あった本屋がほとんど見かけなくなってしまっています。アマゾンなどネット販売の急拡大であったり、若者の本離れであるとか、少子化の影響とかいろいろとその理由はありますが、そもそも書店のビジネスモデルが、陳腐化していていて顧客志向を満足できていないことがあると思います。

今、書店で何とか商売が成り立つのは、品ぞろえが充実している大型書店ぐらいであろうと思います。その大型書店でも品ぞろえではアマゾンに絶対勝てません。唯一書店がネット販売に対して優位なのは、実物を手に取って確認できる場を提供していることだけです。ところが最近では、雑誌の立ち読みで商品そのものが汚れたり、立ち読みだけで買わない客への対策から、大手の書店でも、見本誌すらおかずに雑誌すべてをビニール包装するようになってきました。それでは手に取って、見て買おうという購買層を失うわけですから、それではネット書店と同じことなので、わざわざ足を運んでリアル書店から買う理由がもはやなくなっており、商品選択の容易さや書籍情報の提供という点では到底ネット販売には勝てるはずがありません。

私も出版した経験から、出版業界の古い体質というか資源の無駄遣いビジネスの本質を強く感じました。基本的に出版物は新聞と同じで店舗での委託販売、つまり書店というスペース貸し事業にすぎません。限られたスペースを日々新刊書籍が取り合うという構造で、売れる本にはスペースを割き、平積みして宣伝POPで販促の取り組みを強化します。しかし、いったん売れるスピードが落ち始めるとどんどん隅っこに追いやられ、最後は出版社が在庫引き取りになります。それでは出版社には大きなリスクとなります。そのため出版社のビジネスモデルは、出版社がリスクを持つ商業出版ではなく、最低在庫を執筆者に負担させる「ブランド出版」だとか「自費出版」という形で売れなくても儲かるようにしているのです。売れれば出版社がもうかり、売れなければ執筆者が引き取るという世界です。

かように書店は、ビジネスモデルとしては自分自身でリスクを取らず、売れた分だけマージンが入る仕組みですから、本を並べて客を待っているだけというのが実態です。私も子供のときの書店に対する思い出としては、街の書店にはあまり本の数がなく、店のおばちゃんがカウンターで一人座っているというものでした。実際、書店として売るために、何か情報発信をしてきたでしょうか。顧客にどういう価値を届けるかプロモーションをかけてきたでしょうか。商店街の多くの書店が早晩流通から駆逐されるのは仕方がないと思っています。

大手の書店を見ればわかりますが、その品ぞろえと立地の優位性から、多くの集客力があります。つまり書店が今後生き残れるかどうかは、その集客力を利用し、何の情報をどれだけ発信していくかにかかっているのではないでしょうか。書店が人に情報を提供する場としての機能価値を発揮できるかがカギとなります。〇〇屋書店にいけば何かおもしろいイベントをやっている、サイン会をやっている、セミナーをやっているとか、何か面白いコンサートでも良いし、パソコン教室でも、文化体験勉強会でもいいのです。この書店にいけば何か役に立つ情報提供の場として楽しいというようなイベントスペースの設置と、イベントの実施が書店の価値を高めていくと思っています。

街の書店ではなかなか難しいと思いますが、商店街で書店として生き残るためにも、街の情報発信拠点、知と文化の集いなど、付加価値を提供する姿に変革できるかが最も重要ではないでしょうか。いつまでもカウンターに座っていれば客が本を買いに来てくれて儲かる、というビジネスモデルはもうもたないと自覚できなれば廃業しかないでしょう。品揃えもなく、何の情報提供もない書店には存在価値はありません。