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久しぶりのCEATEC視察で驚いたこと

ほぼ10年ぶりに幕張で開催中の展示会CEATECを見に行きました。その様変わりに驚くとともに、まさに時代の変革を肌で感じたのです。今のCEATECしか知らない人にとってはわからないと思いますが、元々はいわゆる「エレショウ」と言われるエレクトロニクスショウがベースにありました。今のCEATECに変わって子として19回目とのことですが、エレショウの時代から家電見本市といった日本の電機業界を代表する最大の展示会でした。当時の電機メーカーはこぞって毎年新規の家電製品を出品し、それこそ薄型テレビやDVDレコーダーなどの技術を競っていた時代がありました。外国メーカーの出展も多く、GE/RCAやPHILIPSなども大きなブースを構え、2007年のピーク時には国内外895社が出展し来場者も20万人以上が訪れました。今年は約700社の出展、16万人の来場者を見込んでいるようですが、その中身は大きく変わってしまっていました。

時代の変化によって主催団体の危機感から、大幅な内容の変更を進め、それまでの家電見本市から、あらゆるモノがネットにつながるIOTの展示会にコンセプトを変えていったのです。

この流れは、顧客が求める価値に焦点を当てれば当然のことではありますが、一方で世の中が求めているのは、全てIoTなのか、ソリューションなのかという疑問も感じたのです。実際、会場ではいわゆるエレクトロニクス産業の存在感がかなり低下してしまった印象を強く受けました。今まではエレクトロニクスが付加価値を訴求し、それが世の中の変化をけん引するという構図であったと思いますが、エレクトロニクス関連企業が、社会にこういう事業でこういう価値を提供していくのだというビジョンはあまり感じられなかったのです。

もちろん、出展されている企業の方は、必死になって「ソリューション」の価値提案を展示ブースで訴求されていました。しかし、そもそも「ソリューション」のニーズは顧客側から出てくるのを待って、顕在化したニーズに対して、我々はAIやIOT技術でこう解決しますよ、といった取り組みが主体だったように思います。

もともと電機メーカーのプレゼンスが縮小しているとは言え、出展しているメーカー自身の訴求力はかなり落ちてきていたのです。むしろ、コンビニのローソンなどは、次世代のコンビニとはこういう機能を持った業態に変化し、より便利でより価値を提供できる小売りを実現するために、AIをこう活用しますという具体的提案であったり、人不足の社会を乗り切るために、いかに無人店舗を実現していくかといった次世代の実験店舗をブースのコンセプトにしていました。すごくインパクトがあり、ローソンは今後こう社会発展に貢献していくという具体像を示していました。朝一番から実験店舗での体験のために、多くの来場者が列をなし、一番注目を浴びた企業ではなかったかと思います。

しかし、IOTの時代に、CEATECの主役を流通が奪い取ったというのではなく、メーカーの中でも、より世の中をこう変えて顧客価値を高めていきたいというコンセプトを明確に出していたところも目立ちました。

例えば、小松製作所のプレゼンは大変印象的でした。もともと小松製作所は建設用機器をネット化することによって顧客価値を高めてきたところです。今回のブースでは、新時代の建設業の発展のためにAIやIOTを駆使して何が小松としてできるかにこだわっていました。測量もドローンを使って短期間に三次元画像処理して、すぐに設計に落とし込み、IOTを駆使して、建設工程を細かく細分化、いつからどのタイプの建設機器が何台必要か即座に示すことができます。そして現場で設計変更や工期変更の必要性が出たときには、即座に遠隔で設計データの修正に反映され、大幅なコスト削減と工期短縮が可能となる価値を提案していました。また、人手不足への対応貢献として、建機を遠隔無人操作できるシステム化し、熟練工でなくても遠く離れたところから実際の土木工事が可能となるなど、今までの建設常識を打ち破る大胆な提案を行っていました。小松製作所は今後ますます発展していく確信を持ちました。

寂しいエレクトロニクス産業の価値提案

メーカーでも小松製作所のように、AIを利用していかに世の中に貢献する価値を作るかに焦点を当てたところも目立ちました。しかし、私自身、電機メーカー出身として非常に寂しく残念に感じたのは、エレクトロニクス関連企業が自らこういう世の中を創っていきたいといった具体的なビジョンの発信が見られなかったことです。

もちろん海外の大手エレクトロニクス関連企業の出展はゼロですし、ITのプラットフォーム事業も、NTTとKDDI以外にはありませんでした。日本の大手エレクトロニクス関連企業も、SONYや東芝は出展していませんし、他の電機メーカーも「ソリューション」という言葉は踊っているものの、しからばどんな世の中を作っていきたいか、そのビジョン達成のために、自社はどのような商品・サービスの価値を創造していくかという思いが感じられるブースは正直なかったのは大変残念です。

これはあまり言いたくはなかったのですが、私の前職でありましたP社は、電子部品・デバイスの事業分野として出展していました。トータルソリューションの事業分野で出ていた他のH社やN社F社でさえも、あまりビジョンが感じられなかったのですが、P社はいったい何を訴求したいのかさっぱりわからなかったのは大変残念でした。

P社のブースコンセプトはセンシング技術であったようですが、展示されていた商品は一切なく、しからばそのセンシング技術をどう活用してどんな新しい価値を提供するビジョンを訴求しているのか、全くわかりませんでした。そのコンセプトの説明によれば。「見えないものの見える化」を核としたイノベーションでヒトと社会に寄り添うソリューションを創造するため、センシングを中心としたデバイス技術の展示を、来場者参加型の「グラフィックファシリテーションワークショップ」を通じ、来場者との対話を通じた、オープンイノベーションによる新しいビジネスの創出に取り組む・・・・とあります。

いったい何を訴求したいのか、誰か理解できた人がいれば是非教えてほしいです。「見える化」とか「ヒトと社会に寄り添うソリューション」とか、「ファシリテーションワークショップ」とか、具体的な意味が全く伝わってこない何か自分勝手な言葉に自己満足しているような印象です。CEATECの変貌とともに今後の目指すべき具体的な商品・サービスを通じた顧客価値の姿を訴求することの重要性を見つめなおす時期に来ているような気がしました。