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AIに置き換えができない中小企業診断士

 

これから大きな世の中の価値観が根本から覆っていきます。人口知能AIの発展により、今まで人間がやっていた仕事がどんどん消えていく運命にあります。UBERやAIRBNBなどのシャアリングエコノミーが台頭していく流れが止めようがありません。既存のタクシー業界や旅館、ホテル業界は必死ですが、いくら規制で守ろうとしても、守っているつもりが結果としてグローバル市場を失うことにいずれ気づかされることでしょう。

サムライ業といわれる~士という資格に基づく仕事の分野があります。士業の典型的な分野としては、弁護士や税理士や社労士、公認会計士、司法書士などがあります。その一つに中小企業診断士というものがありますが、この資格は他の士業とはかなり異なっています。表向きは唯一の経営コンサルティングの国家資格です。しかし、この資格には法律で保証された独占業務というものがないのです。上記の士業以外にも医師や看護師なども国家資格ですが、それらはすべてある業務については、その資格保有者以外が行うことを法律で禁じられているのです。ところが、経営コンサルタントという仕事は、資格がなくても基本的に誰でもできます。口だけで人をだます輩にやたらと〇〇コンサルティングと名乗っている場合が多いのでが、そういう存在が野放しにされてているがゆえ、コンサルタントといえば何か胡散臭くて、何か騙されてしまうと身構える企業経営者が多いのは悲しいところです。中小企業診断士はすべてきちんとしたコンサルタントだということは断言はできませんが、もっと今まで以上に中小企業が活用できるようにするためにも、ある程度コンサルティング分野での法律に担保された独占業務があってもしかるべきではないかと考えています。

中小企業の多くは、まず相談する窓口として税理士や銀行を頼られます。確かに税務や金融面では頼りになる存在だと思います。ところが中小企業の経営はもっと複雑です。人事の問題なら社労士、法律の問題なら弁護士、経理や資産管理だったら会計士や司法書士など、いろいろと士業はそれぞれの専門分野で企業を支えてきました。ただ、中小企業診断士は、それら全てに加え企業を成長発展させていくかという視点から総合的な支援を行う存在です。唯一高いレベルからよろず相談を受けられる資格ではないかと思っています。

弁護士と診断士以外はAIが得意とする領域

そのサムライ業の資格に大きな変革のうねりが近づきつつあります。野村総研とオックスフォード大学の共同研究でショッキングな報告が出ています。AIが士業を破壊してしまう可能性が高いというものです。決まった法律や制度、手続きに基づき、それぞれのケースを判断する助言業務については、過去の事例の積み重ねによって、ほとんど回答がわかりますし、実際に公的書類を作成するにあたって、士業の有資格者が代理で作ったものでないと受理されないということはありません。つまり、一般個人がクラウドサービスを使ってAIが判断して自分で書類を作っても問題ないようになってきているのです。例えば、経費処理一つにしても、経理の専門家に聞くよりも、自分でネット検索して仕訳を正しく行うことも可能になっています。税理士も会計士も、司法書士も社労士も非常に存在が脅かされているといっても過言ではありません。

その中で、非常に興味あるデータとして、弁護士と中小企業診断士はAIに置き換えられる領域は少ないというものに驚きました。将棋や囲碁の世界でもどんどんAIが人間の判断を超えていく時代にあって、なぜAIはこの二つの資格を置き換えることが難しいと判断されているのでしょうか。

弁護士は法律に基づくものなので、一見AIが得意なように思えるのですが、実際憲法の条文一つにしてもいろんな解釈があって、行列のできる何とかというTV番組でも、弁護士の見解が人によって異なることを番組構成にしています。答えがロジカルに絞れないところはAIがまだ太刀打ちできない分野なのではないかと思います。

翻って中小企業診断士の場合はどうでしょう。特に、関西では「目に見えないコンサルタントのようなものに金は払いたくない」という企業風土があり、同じ診断助言に関する経営支援を行うものであったとしても、企業によっては受け止める価値が違います。また診断を受ける企業もそれぞれ千差万別であって、置かれている環境も競合状況も人やノウハウも全く異なります。AIがちゃちゃっと計算して、「はい、貴社がとるべき戦略がこれが正解です!」というわけにはいかないのです。

それなら、中小企業診断士はAIにできない判断ができるのか?という疑問が出ます。これはYESとのNOとも言えないのです。「ほら、見ろ!だからコンサルタントは胡散臭い仕事なんだ、騙されんぞ!」という経営者もおそらく多いと思います。しかし、経営支援の現場は非常にアナログでバランスの世界です。もちろん数字で根拠を示しますが、数字だけが正解ではないのが経営なのです。数字だけで経営ができるのであれば、経理社員さえいれば十分です。そういうわけにはいきません。実際には、経営的に判断しなければならない場面で、10のオプションがあっても、コンサルタントは1の正解を教えるのが仕事ではありません。論理的に一つの方向性を助言をすることがコンサルタントの仕事と誤解している人は辞めたほうが良いのではないでしょうか。

一番必要なことは、常に経営者に寄り添うことだと思っています。その過程において、「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両(松下幸之助)」を提供できればコンサルタントとしての本望です。AIは、決して「経営のコツここなり」とは教えてくれないのだろうと思います。