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日本企業は海外進出しない内弁慶経済のリスクに気づくべき

最近、日本の品質やこだわり、匠といった観点から日本の製品や技術、和の素晴らしさ、日本のマネジメントを讃えるTV番組が多いことに違和感を覚えていました。日本好きな外国人を日本に招待して、日本の素晴らしさに驚嘆させるという番組は、多くの日本人に優越感を与えるだけで、本当の実態は違うと思わざるを得ません。

日本製品の優位性は本当ですか?

日本の製品の品質や付加価値はそんなに高くて誇れるものなのでしょうか。中国製や東南アジア製に比べると日本製品の品質が優れているのは当然ではないかと思っていませんでしょうか。それではなぜ日本企業が生み出す付加価値生産性は諸外国に比べて低いのでしょうか。なぜ高品質を評価されているはずの100円ショップの製品が日本で売られるときは、アジア各国での販売価格より低いのでしょうか。一旦日本に輸入されて商品がアジアに輸出されているからというわけでは ありません。

企業が日本市場でのみ事業をやっていると外の世界が見えないのです。品質が劣っていると信じている中国や東南アジア製の製品が売れているのは何故でしょうか。どれだけのレベルまでキャッチアップできているのか、自分の目で見られたことはありますでしょうか。

日本国内向けの事業でやってきた企業の多くは、未知でリスクの大きい海外進出にかけるより、国内向けビジネスでもまだまだやっていけるはずと思っています。海外展開にしても軸足は常に日本に置いて、日本製というブランドがあれば輸出でも十分高単価で売れる、展示会を政府の補助金でちょこっとやって現地代理店を探せば、海外市場で販売できると思い込んでいる企業があまりにも多いと感じています。

行政も企業も日本の本当の姿は見えていない

そもそも国の政策も、中小企業庁による「ジャパンブランド育成事業」であるとか、ジェトロが中心となっている「新輸出大国コンソーシアム事業」などは、日本製品の優秀さを武器に海外市場に打ってでましょう、海外市場を開拓するために補助金をつけましょう、という主旨が骨格になっています。正直、何かずれていると感じざるを得ません。

もっと日本の真の姿を海外から冷静に見る姿勢が、企業側にも行政側にも求められます。このような企業や人が日本国内にずっととどまって、自己満足している状況は非常に危険であると感じます。

先月、数か月ぶりに海外出張したことで、改めて日本企業の国内基点の内弁慶事業リスクを強く感じることができました。 確かに日本に住み、国内向けのビジネス展開だけを行うのは心地が良いのです。海外展開した場合でも、取引先を日本企業だけに焦点を当てているだけでは発展性は限られています。

改めて感じるのは、凄い奴らが海外にはゴロゴロいる、ビジネスチャンスはいくらでも見つかる、国外で勝負しないのはあまりにもったいないということです特に優れた商品、サービスがあるのなら、絶対に世界に展開し勝負するべきであると感じます。

少子化に伴い、どれだけ必死で頑張っても、国内市場は縮小し続けるのは確実です。実は最も危ないのは、日本国内にいるとそれに気づくことが非常に困難であるという事です。誠に不幸な事ですが、自分たちが気づかないうちに、真綿で首を絞められる、緩慢な死が近づきつつあるのです。

にもかかわらず、海外に打って出ない国内向けだけのビジネスでは、どうしても細かな金儲けや国内での売り上げを元にした、小さめの成果狙いにとどまざるを得なくなってしまいます。そして、そのうちに今後は海外の企業がものすごいパワーで どんどん参入し、遂には日本国内市場も外資企業に大半を侵食されてしまう未来がそこまで来ています。

行政がジャパンブランドだとか、新輸出大国だとか、浮ついた政策をやって、企業がその補助金に甘え、メディアが日本の技術、品質を持ち上げている間に、着実に日本企業の衰退が迫っている現実に気づかないのは大変な危機です。

東南アジアにおいて日本のプレゼンスが確実に下がっている実態を、どこまで日本の行政、産業界は認識しているでしょうか。 日本製品の輸出拡大を図るために、補助金をつけて満足している政策はどこかずれていると言わざるを得ません。

海外展示会でも内弁慶経済を感じる

内弁慶となっている証左として、以前より海外の展示会ブースを見ますと、やたら日本製という”From Japan”とか、”Made in Japan”の表現で高付加価値をPRしようという企業が多いことがあります。ほとんどの企業は違和感を持っていないどころか、行政もジャパンブースというような形で企業を集めて展示会に出展を行う場合があります。しかし、海外の顧客は本当に日本製というキャッチフレーズにどこまで関心をもっているのでしょうか。実は、国際市場において、もはや日本製はあまり意味をなさなくなっているのではないかと感じることがあります。日本製だから高く売れるというのは最早幻想です。それほど付加価値が高いのであれば、なぜ日本市場では東南アジアより安い値段で売られているのでしょうか。

多国籍の人々が集まる場においてはその企業が日本発であるかどうかは、あまり関係ありません。実際に地域的なインキュベーターをのぞいて、展示会ブースでアメリカ発、とかシンガポール発、とか言っている会社はまずありません。そんな事はビジネスの場ではどうでも良く、世界に挑もうと考えている日本の企業が”日本発”とか”日本製”という表現をする事自体が時代遅れです。おそらく日本にから外に出ない、引きこもり型の日本企業や海外の実務感覚を持てない行政機関に とっては到底理解できないことだと思います。

日本企業だけでなく日本の行政もメディアも、妙に自国の会社や製品を褒める傾向にあるのは完全な時代錯誤の内弁慶病に陥っているといってもいいでしょう。これは日本特有の感覚で、例えばフランス人が、”フランスの企業すごいよね”とか、インド人が”インド人は最高”と表現していたら、どうしても違和感を感じてしまいます。実際、そのようなキャッチフレーズは聞いたことがありません。まさしく日本国内だけで盛り上がっている自己満足です。

外から見ることの大切さ

自分と異なる人々や環境に触れる事で、企業も人も強くなります。しかし、日本国内ばかりにいるとそれに気づく事は少ないのです。日本で生まれ育つと、意図的では無い限り、日本人以外と接する事も少ないと思います。これは国際的に見てもかなり希有な国民です。日本人自体非常に特殊であるという感覚をまず持つことが必要と思います。

世界の市場で勝負するには、自ら異なる環境に身を置き、人も企業もどんどん海外に出て、国際的にどんどんチャレンジするべきであると、久しぶりの海外出張で深く考えさせられました。私自身も、いつまでも関西から世界を見ているだけではどんどん取り残されそうです。