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コンサルタントの優劣はネットワークでの価値創出力

3年間海外展開支援コンサルティングの仕事をさせていただいて改めて感じることがあります。コンサルティングそのもののは一見専門性の深さに価値があると思えるのですが、世の中で一般にコンサルタントと称している人は、専門性の深さを売りにしているがゆえに人間性に偏りがある人が多いような気がします(私も含め)。人間性としての器も大きく、奥深い知見と経験を持ったカバレージの広い人は、どちらかというとコンサルタントには向いていません。どちらかといいますと、そういった方は人に上に立つリーダーシップのある社長の要件です。コンサルタントは決して社長の器ではないのです。コンサルタントの中には、専門性の知識を上から振りかざし、上から目線で経営を指導することがコンサルタントの真骨頂だと誤解している人が多いのも事実です。

3年前にジェトロで新興国進出支援専門家として採択されて、企業支援の実務経験を重ねていったのですが、そのときから他にも専門家がたくさんおられました。多くは海外経験の豊富な大企業のOBでした。確かに特定分野についての専門知識は高い方が多かったように思いました。ただ、実際そこで各支援先企業からの声として多く出ていたのが、中小企業の実態も理解しようともせず、上から目線で「こうあるべきだ、こうするべきだ」と講釈される専門家とはやってられない、変更してほしいという声です。私を含めての反省なのですが、大企業のOBというのは、経営資源が脆弱な事業環境でマネジメントした経験が非常に少ないのです。よって、戦略的に正しいと思ったことを、今までの経験をもとに「べき論コンサルティング」に陥りがちです。しかし、そのような上から目線のコンサルティングは中小企業では何の役にも立ちません。

やはり求められるコンサルティングは、社長の傍に黒子のように寄り添い、一緒に悩み、一緒に行動する伴走パートナーではないかと思うのです。社長がマラソンのゴールテープを切るまで、あるときは伴走しているペースメーカーであり、あるときは体調の変化を感じ取ってペースダウンをアドバイスしたり、あるときは目標タイム、目標順位を達成するために、他のランナーの動きをサーチしたり、また給水役であったり、そして頑張れと声をかける応援団、そういう立場であるべきと思うのです。決して社長の前に出たり、手を引っ張ったりするのがコンサルタントではないと思っています。

この伴走型のコンサルタントに求められるのは、決して専門性の深さだけではありません。もちろん専門分野で知見が乏しいと基本的なコンサルタント能力がないと話にならないので、一点集中で誰にも負けない専門領域は必要です。ただそれだけでは単なる専門知識屋です。専門知識だけの専門家は、決して「経営コンサルタント」ではないと思っています。企業経営者が必要なのは特定分野の専門家なのか、幅広い範囲での経営アドバイザーを求めているのかによって異なります。しかし、税の専門家である税理士、人事労政の専門家である社労士などの専門家に、伴走型コンサルタントとしての機能を期待している経営者も多くいます。一方、幅広い範囲での経営アドバイザーに対する期待となると、通常中小企業診断士が最も適しているとは思いますが、中小企業診断士は個々の専門領域でもある程度の知識があるものの、税理士や社労士、行政書士、司法書士など各専門家よりは底が浅いのは事実です。企業の立場からすれば、ワンストップですべてに頼れる存在であるアドバイザーがいればありがたいはずです。つまり、企業にとって信頼のおけるアドバイザーとは、領域に専門家としてコンサルティングを行うだけではなく、広範囲の専門家とネットワークを組んでワンストップでニーズに対応していける力がますます求められるのではないかと思います。

私は海外展開支援の専門家です。海外経営における課題解決に向けてのお役立ちはほぼカバーできると考えています。しかし、日本にいて企業経営のお役に立つポジションから考えますと、例えば現地進出にあたってのライセンス取得の書類作成業務や現地拠点の経理管理業務支援などは、ベトナム語で対応できる現地におられる専門コンサルを使うほうが有益です。海外での偽物対応のための知財戦略などは、私よりも海外対応できる弁理士の方がいい仕事ができます。一方、現地におられる進出コンサルや会計コンサル、人事コンサルでは、日本の親元経営管理までのアドバイスや現地での販路開拓などの支援は困難です。ということは、当社のような海外拠点立ち上げ後の経営安定に向けての支援を、親元事業と一体でコンサルティングできるところと、現地の業務管理系コンサルが提携することによって、さらに大きなお役立ちの世界が広がっていくのではないかと思っています。

また大手のコンサルタントや監査法人や弁護士、銀行にとっても同じことが言えます。公的支援機関であっても、また大手の支援コンサルであっても、単独で自己完結して企業ニーズに合わせたサービスを提供することはほぼ不可能です。各専門家が互いに連携し、コラボによって提供価値のシナジーを高めていくことが、さらなる企業にとってさらにお役にたてるコンサルタントの在り方、方向性であるという確信が、この4月に法人化を行った背景の一つでもあります。

今回、法人化にあたって多くの励ましをいただき大変感謝しております。いつも顧客企業の皆様には、常に経営理念の重要性とビジョンの明確化に全ての経営課題の原点があると申し上げている立場として、改めて自身の会社法人化にあたっての目指すべき方向について思いを新たにしたところです。