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海外進出日系企業の共通の問題点

先般、日本企業の中国進出支援をされている中国人弁護士の方からお話を伺う機会がありました。テーマは「日系企業の中国進出成功要因・失敗要因・対応策」でした。

企業勤務時代には中国事業戦略にも数年携わったことがあり、中国事業の問題点にもある程度精通しておりました。海外といっても国・地域ごとに事情が異なり、必ずしも海外をひとくくりにして語ることはできません。特に中国は日本とはもちろん違いますし、欧米の常識も通用しないところです。もちろん政治経済的にも複雑な要素を抱えており、中国といえども決して一つの見方で判断はできません。その後アジア、特にベトナムに深くかかわるようになって、アジアとも違うことを肌で感じてきました。しかし、今回久しぶりに中国の弁護士から現在の日系企業にとっての中国進出の問題点を聞き改めて驚いたこととして、確かに中国は特殊ではあるものの、日系企業が抱える問題点は決して中国特有のものではなく、かなりの部分においてベトナムや他のアジア諸国で抱える日系企業の経営上の問題点と似通った面が多いということでした。

逆の点から考えると、これらの問題点は中国の問題とかベトナムの問題というよりも、日本の特殊性から引き起こしている共通の要因ではないかと感じることができるようです。

最近の中国日系企業の経営上の主な問題点・困難点

この弁護士が日系企業からうける依頼案件の最も多いのが、労務人事問題、つまり社内規制に関する相談であったり、それに伴って起きる従業員の問題、解雇や仲裁の依頼案件です。その他には、投資や清算・撤退案件、そして債権回収対応や日常法務業務相談と続きます。つまり雇用労務と法務関連のトラブルが多いということです。弁護士への相談ということでどうしてもトラブル解決という課題が多くなります。中国に限らずベトナムは他のアジアでもだいたいこのような分野の経営上の問題点が浮かび上がってくると思います。

一方、労務問題に限らず、経営全体の主な問題点として挙げられたのが、

・ 従業員の賃金上昇 (中国では昨今日本の本社と賃金が逆手のケースも出ている)

・ 品質管理の困難さ

・ 要求に適する人材探し、人事管理の困難さ

・ コスト削減の限界

・ 競合の存在、圧力および取引先からの値下げ要求 ・ 新規開拓の困難さ、販売市場・消費の低迷

・ 行政規制、通関手続き、税務制度などが不透明、煩雑

・ 不合理な行政警告、処罰、罰金、課税など ということでした。

見事にほとんどベトナム事業経営の問題点と一致しています。賃金の上昇レベルや不合理な行政警告など、若干中国でベトナムで軽重の差はありますが、項目としてはだいたいかぶっています。つまり、欧米への進出は別ですが、だいたいは発展途上国へ展開する際には、このような項目が共通の問題点として覚悟しなければならないことを意味しているのです。

海外展開準備、手続きにおける留意点

これら問題点への対応策として留意するべき点は多くあります。例えば人事関連契約の準備は最も重要で、三本柱として「就業規則」「秘密保持」「労働契約」が要注意です。それぞれ単に準備すればよいのではなく、内容の法的有効性やコンプライアンスなどにおける適格な準備と従業員への丁寧な説明が求められます。労働法に合致しない規則を制定すると無効になり、処罰や懲戒解雇ができなくなる可能性も出てくるわけです。新法規制や、改正に伴い適時アップデートを行う必要があります。日本では一回作ってしまうと頻繁に改正はしませんし、従業員も事細かく規定について突っ込んで聞くこともないと思います。しかし、それは世界標準から考えると非常識です。ベトナムでも人事関連契約は大変重要です。特に日本人の感覚でピンとこない処罰事項を細かく規定することは常識です。それは問題発生時に双方の権利義務関係をあらかじめきちんとするのが当たり前という考え方からです。ここをいい加減にすると従業員の労働意欲や信頼関係が低下する原因にもなることに留意するべきですし、強い組織づくりのためにも必須なのです。

どうでしょう。日本では処罰事項を厳しく決めること自体が、従業員が会社を信頼できなくなる要因と考える人が多いのです。日本の常識は世界の非常識。昨今の日本の政治にも同じようなことが起きていると感じませんか。