経営計画策定は経営者にとって欠かせない基本的能力
経営者向け研修として、国内外の公的機関やビジネススクール、研修会社は様々なカリキュラムを提供しています。ところが提供されるプログラムを見ても、一番重要な「経営計画(ビジネスプラン)」を軽視しているような傾向を感じています。
経営コンサルタントの国家試験である中小企業診断士試験で求められるスキルとして、企業経営理論、運営管理、経済学、財務会計、経営情報システム、経営法務、中小企業政策が一次試験で求められ、二次試験では診断実務としての「組織・人事」「生産・技術」「マーケティング」「財務・会計」の診断事例記述など総合的能力が判定されます。
10年以上企業の経営診断や経営者向け研修に携わってきた経験から、経営者に求められる企業経営管理能力は、個別カリキュラムの知識を習得するだけでは十分ではありません。診断士試験では能力を総合的に評価するために、知識分野ごとに科目が分かれているのですが、企業経営管理が集約されるスキルとは、「経営計画策定」つまりビジネスプランの策定能力であると確信しています。
企業が成長発展するかはビジネスプランを見れば一発でわかる
ビジネスプランは、経営戦略の具体化であり、日常の経営実践のモニタリングとコントロールをであり、経営の見える化による経営活動のよりどころです。ところが内容的には企業理念、ビジョン、経営戦略を時間軸と組織軸に展開するものであるため、ややもすれば既に他の研修で学んだ項目を実践するだけという本質を見ずに軽視する傾向があります。
経営計画策定つまりビジネスプランについての実践研修を重視しない経営者研修は、理論だけを教えるだけで十分な効果につながらないと言っても過言ではありません。
企業経営とは企業自身の存在価値そのものである企業理念から日常のオペレーションまで一つのピラミッド構造で把握することが重要です。どんなに立派な企業理念を念仏のように唱えているだけで、組織人事から日常の経営管理が伴っていないと経営としての一貫性がありません。強い経営力を持っている企業は、このピラミッドがバランス良く強固な体制ができていて、競争優位性のあるビジネスモデルを有しており、結果として収益力も高いというのは実感してきました。
素晴らしいピラミッド経営ができているかどうかは、中心部分にあるビジネスプランを見ればすぐにわかります。経営の実践は全てビジネスプランに集約されているからです。
経営計画策定の実践を教えない研修は存在価値なし
ビジネスプラン研修は知識を教えるコンテンツでは意味がありません。ワークショップを通じた実践研修であるべきです。私が今まで講師として提供してきたビジネスプラン研修では、実際にグループワークで会社を設立してもらう計画を策定してもらいます。会社を創業する経営計画書を策定するには、組織人事、マーケティング、生産管理、財務会計などの個別スキルを総動員しないと説得力あるビジネスプランにはなりません。
実際、国や公的機関が制度として提供している様々な補助金を申請するには、新規事業にどう取り組むかといった観点からの経営計画書で審査されて採択、不採択が決まるのです。しかし実態として多くの経営者は自身で経営計画書を描くことができず、高い費用を払ってコンサルタントや専門家に経営計画書策定を丸投げして申請するケースが多いのです。
過去、様々な補助金審査にも関与してきたこともあり、補助金審査で何を見るかどうかというのは、経営者が自分の思いをどう経営計画書に込めて策定できているかという一点に絞られると言っても良いと思うのです。どんなに事業計画書を綺麗に仕上げられたもので申請したとしても、専門家に丸投げしたものか、それとも経営者自身が策定したものかどうかは、ほとんどすぐに見破ることができます。魂が入っているかどうかは簡単にわかるものです。
私が経営者育成研修でビジネスプランを担当していたとき、最後にいつも次の言葉を伝えて締めくくっています。
「ビジネスプランは単なる計画書ではありません。フォームを埋めれば良いというものではありません。皆さんは国の経済、社会発展を担う経営者として、常に新たな価値を創造し、社会に貢献するビジネスを目指してください。社会から評価される事業は必ず成功します。ビジネスプランは経営者としての思いを全てぶつけ、周囲の共感を得てさらなる発展を目指すものです。 ビジネスプランを自ら作らず、経営企画担当や経理に作らせている経営者は失格です。」
「ビジネスプランは経営そのものである。」 国内外の公的機関やビジネススクール、研修会社の皆さんに是非お伝えしたいことです。