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公的機関による海外展示会出展ブースは税金の無駄遣い?

地方公共団体など公的機関が産業支援の一環として、よく海外の展示会に地域企業を集めて出展させています。しかし、この取り組みは公的機関が企業を支援してますよというアリバイのためにやっているだけで、実際には効果がほとんどなく、税金の使い道としての費用対効果について論理検証されたのは見たことがありません。

まず第一に、海外展示会に出展することが地域企業にとって本当に有益なのか疑問です。展示会への参加には企業側から是非出展したい、それによって販路開拓を行ったり、提携先を見つけたいといった明確な目的があって、そのために公的な補助支援をしてほしいといった要望に基づく海外展示会でのブース出展ではありません。ほとんどは団体の産業支援予算ありきで、過去の効果検証なしに、毎年同じように繰り返し海外展示会への公的機関のブースを設けています。

もちろん海外展示会出展には膨大なコストがかかるので、出展料や展示物の準備、現地での宿泊費や交通費など、企業にとってはかなりの負担となります。しかも、その負担が見込まれるリターンに見合うかどうかは不透明です。さらに海外展示会は競争が激しく、参加企業の中に埋もれてしまう可能性も高く。そのため、地域企業が海外展示会に参加することで実際に得られるビジネスチャンスは限定的であり、投資に見合ったリターンが得られるかどうか疑問であるのが海外展示会出展の本質です。

だからこそ公的機関が支援する意義があるという論理から、いろんな公共団体が海外展示会にブース出展して、そこに数社の出展企業を募集してほとんどが無料で出展させるのです。

ほとんど注目されない一貫性のない展示コンセプト

少し厳しい見方になりますが、公的機関が出展する海外展示会は、一貫性のあるコンセプトが欠如しています。この欠如が、展示会の効果を希薄にし、来場者に訴求する魅力を損なっています。なぜなら公的機関にとっては、どこでもいいので企業を集め、出展ブースを設置すること自体が目的化しているためです。

ただ国内の展示会であれば、例えば地方の商工会議所は地域産業をPRするためにコンセプトも出展企業もまとめ、地域ブランド力の強化といった目的が明確な出展も多いです。ところが海外の展示会では地域ブランドなどはほとんど見向きもされません。個々の企業が提供する顧客価値がいかに魅力的なものかが明確でないと、来場者の注目を集めることができないからです。

今までいろんな海外の展示会で日本の都道府県や市町村、商工団体などが展示しているブースを見てきました。JETROのブースも出展しています。しかし、顧客は公共団体の名前に関心があってブースに立ち寄るわけではありません。さらに、公共団体のブースでは、それぞれ数社の統一テーマのない企業がバラバラの展示コンセプトでポスターを1枚か2枚貼ってあるだけなのです。

地方公共団体ブースでは、出展企業が一貫性のあるコンセプトを持っていないため展示効果の欠如が目立ちます。各企業が個々に出展し、それぞれが異なるビジョンやメッセージを発信するため、来場者にとっては展示ブース全体の統一性が欠如しているように感じられます。これにより、来場者が展示会に興味を持ち、展示内容に引き込まれることが難しくなるのです。

さらに問題なのは、展示会後のビジネス創出が企業に任されることです。地方公共団体が主催する展示会においては、出展企業にはある程度の期待が寄せられるものの、具体的な支援やフォローアップが不足している場合が多いのが実態です。展示会終了後は、企業が自らの力でビジネスチャンスを追求しなければならず、地方公共団体にはそもそもビジネス創出ができるノウハウは少ないです。結果として、展示会が終わったあとは企業に任せっぱなしで、その後のフォローアップとして進捗状況のヒアリングを行うだけのため、出展効果はほとんど期待できない状況に陥っているのが実情です。

またそもそも出展企業は公共団体から誘われて出展しているため出展費用は払っていないケースが多いです。はっきり言いますと企業側も出展の本気度が低いのです。また企業の成果が上がらなくでも公共団体の職員が責任を取ることなどないのです。このような形での出展で成功するはずありません。

地方公共団体主催の展示会における出展企業の一貫性のないコンセプトと、ビジネス創出支援ができないような展示会出展では、費用対効果が期待できない一因となっています。展示会出展では出展企業の提供価値の視点からの統一性を高め、出展企業が展示内容を一貫したメッセージで訴求できるようサポートすることが重要です。さらに、展示会後のビジネス創出においても、地方公共団体はコンサルタントの関与も包含した積極的な支援を提供し、出展企業の成果を最大限引き出せるよう努めるべきであろうと思います。

このように、地方公共団体による海外展示会への出展支援は、効果がほとんどなく、税金の無駄遣いにつながる可能性が高いという観点からも、海外展示会出展のあり方についての見直しが求められます。ブース出展には多額の費用や出張費用がかかります。公的機関が税金を使う以上は、より効果的な産業支援策を検討し、真の地域経済の活性化につながるよう努めるべきででしょう。

むしろ海外展示会に出展したい企業による展示コンセプトの事業計画書を提出させて、審査のうえコンペの形で個別に出展補助金を出すという政策の方が余程効果が高いのではないでしょうか。