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急げ!海外事業再構築に取組まないと手遅れに

事業再構築補助金の公募は過去8回実施されており、第8回は既に締め切られこれから審査が始まります。なお次回第9回は既に公募要領が発表されており、3月24日は最終締め切りとなっています。環境の変化に合わせて毎回公募要領が改正され続けていまして、審査項目は大きく変化しないものの、特に優遇評価する点や補助率を変え、グリーン枠や緊急対策枠、回復再生応援枠といった特別枠というものがかなり拡大しています。

過去の採択事業者の再構築テーマをずっと見てきた感想として、事業再構築といった本来の主旨から外れると思われるような、都合良くビジネスモデルの再構築という理屈をうまく事業計画書にまとめて、店舗改装費といったまとまった投資を補助金で引っ張ってこようとしている案件が増えているような印象を受けます。

公表されている補助金の結果のホームページではもちろん採択案件の事業計画書を見られませんので、テーマ名からのみの推察に留まっているのですが、新規事業で取組む市場や競合のターゲットはほとんどが地元地域でのビジネスモデルに基づくものであるように思われます。

公募要領には「ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に伴い、今後より生産性の向上が見込まれる分野に大胆に事業再構築を図ることを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資する」ということが政策目標となっています。また「ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか」も政策点の評価ポイントにも掲げられています。

事業再構築に取組み事業の構造改革を目指すと謳われている割には、海外市場をターゲットにした案件がほとんど見られず、店舗改装や新規設備の導入で商品レンジを増やすための費用を求める補助金申請が多いのではないでしょうか。ただ、採択率が約半分ぐらいですから、そういった案件は審査で不採択となっているのであろうとは思いますが実際はどうでしょうか。

海外事業の再構築は待ったなしの状況

海外事業展開支援を行っているものとして、海外事業経営は今曲がり角に来ていることを痛切に感じています。しかし、事業再構築補助金の採択テーマを見る範囲では、海外事業の再構築案件はほとんどないと言っても良いと思います。補助金の募集要項に合致した海外事業の再構築というものは申請しても採択されないと考えている経営者も多いからかも知れませんが、そもそも海外事業の再構築と言われても何が問題となっているのか、具体的に何をどう改革しなければわからないというのが本音ではないでしょうか。

そこで海外事業拠点を設立されて事業展開されている企業経営者の方々に質問です。

「そもそも今の海外拠点は何を目的に設立されたのでしょうか? その拠点のビジネスモデルは今でも有効ですか?」

設立された年代によってその事業目的もビジネスモデルも当然違っていると思います。中国や東南アジアに製造展開された製造系の海外拠点は、ほぼ100%近く人件費低減のメリットを求めて進出されたと思います。一部では保税工場として日本への持ち帰り生産のみに特化した事業場であったり、日系取引先の海外移管に合わせて下請け受注を継続するために展開されたという形態が多かったと思います。

その後、中国やタイ等ものづくり産業が先行発展し、地場での付加価値が増えるに従い消費市場が拡大することで、現地での商品企画開発や販路開拓が求められるようになってきました。市場開放が段階的に進むことによって、後発の競合も販売マーケティングや商品企画のための拠点が充実してきした。

当初ものづくりで展開した日本の海外事業拠点は、現在様々な困難に直面しています。日本から発注するものが大きく減少している」「ものづくりの人材育成や品質管理は高度化してきたが、販売マーケティング体制もなく、コスト面でも地場競合に対する優位性が小さくなっている」「経営管理も現地化できておらず日本人出向社員の後継人材もいない」

以前はあくまで日本事業の収益を支えるための補完事業としての海外展開であったと思います。よって日本でのものづくりのノウハウを移転することがKPIの中心でした。ところが少子化の加速によって日本国内経済は全く成長していないばかりか、経営者の高齢化によって時代の変化に対応する経営能力が陳腐化し、事業承継が進まず廃業する企業が増えています。つまり過去に展開した海外拠点は親元事業を支える必要性がなくなっていくことでその存在価値そのものが問われるようになってきました。

それなら海外事業拠点は不要で撤退すれば良いのでしょうか?

結論はNOです。日本企業の成長発展を支える中核拠点を海外事業場とした事業再構築を実践することによって、グローバル競争に打ち勝ち将来に向けて事業承継を実現する砦となるのが海外事業であると確信しています。

今の事業再構築補助金の採択事例のように、国内ビジネスだけの視点では企業経営も国全体の経済も行き詰まるのは必至です。グローバル競争で生き残るために、日本中心の事業で輸出促進によって発展させようとする考えは通用しません。確かに当初は越境ECなりで海外市場へ販路開拓するという手段は考えられますが、最終的には現地で機動的に商品づくりと販売を行える競合にはコスト面でもマーケティング面でも勝てません。

日本企業が最終的に生き残るには、海外に拠点を構え、海外からビジネスモデルを確立する以外には考えられないのです。既に海外拠点を有している企業は、すぐにでも海外事業拠点の経営体制再構築に取組む必要があります。製造工場だけでは行き詰まります。国内事業再編とともに特にアジア製造拠点の再構築の事業計画を策定し、商品企画、マーケティング、販路開拓、経営管理、人材育成、そして企業間提携の多角化を現地事業拠点を中心に確立することを外部支援リソースを活用して進めることが近道です。

サプライチェーン強靭化と事業承継をテーマに事業再構築を

以前のブログで、サプライチェーンの強靭化と事業承継が国が支援する今年の重大テーマとなるということをお伝えしました。

サプライチェーンの強靭化とは「中国リスクに備えよ」に意味することに他なりませんし、具体的に取組む施策としては、中国から国内製造への回帰とともに海外展開の最適化になると思います。

事業承継の問題は上記で述べたように、海外事業の再構築と一体で考えるべきものであり、場合よっては製造拠点をM&Aで地場資本を含む外部企業に譲渡して委託生産化したり、事業開発拠点とするなど、海外事業を新たなビジネスモデルでどう位置づけるかによって最終的に事業承継の道筋も見えてくると考えています。

私は第9回以降の事業再構築補助金で、思い切った海外ビジネスモデルの再構築案件が採択されることを注目していきたいと考えております。また条件が整えば、私自身も事業再構築補助金の申請要件の一つである認定経営革新等支援機関でもありますので、具体的に企業様からのご要望に対応できるかどうかについては再考していきたいと考えています。(今までは諸般の事情で認定経営革新等支援機関としての補助金申請の関与はお断りしておりました)