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現在のベトナムの様子から感じたこと

    

前回のブログで2年4か月ぶりのベトナム出張での渡航規制に関して経験したことについて述べました。PCR検査での大変さや現地でいかにして感染しないようにするか、現地に行って初めて気づくことや驚くことが多かったです。

実際2年4か月となりますと、日本においても外国人観光客を見かけることが非常に少なくなり、インバウンド経済で潤っていたミナミや飲食店街、京都などの観光地は様変わりしてしまったように、ベトナムにおいてもどう様変わりになっているのか、この目に是非見たいと思っていました。

コロナの感染状況については日々情報としては入手できたとしても、細かく町の賑わいの様子であったり、人々の生活の息遣いを実際に感じることはできません。当初ベトナムはコロナ感染状況はほとんど感染者を出さず、台湾に次ぐ優等国でした。ところが今からちょうど一年前の4月末ごろから一気にデルタ株が蔓延し始め、一人陽性者が見つかると町全体をロックダウンしたり、工場を操業閉鎖に続いて、バブル方式で工場内にテントを張って、そこで従業員を寝泊まりさせて対応していたということを聞いていました。また地域によって医療状態が大変なことになり、特にホーチミンでは2万人近くの人が死亡するなど、外出禁止や飲食店の全面閉鎖など社会混乱が起きていたのでしたのですが、それでも一日あたりの新規感染者数は数千から1万人強だったと思います。もちろんワクチン接種は着々と進めていました。

ところがオミクロン株に転移し始めた今年になってかなり様相が変わってしまい、旧正月の2月上旬が全国的に急増し、3月12日には45万4千人に達してしまいました。しかしベトナム政府は3月15日に、入国規制を緩和して日本人の入国については15日以内はビザ免除という、コロナ以前のルールに戻すことを発表したのです。

この緩和によってベトナム出張が可能となったのですが、何故このタイミングで規制緩和となったのか不思議で仕方がありませんでした。

現実的な判断で素早く動くベトナムと石橋を叩いても渡らない過敏症の日本の違い

普通3月12日に過去最高の新規感染者数となっているのに、直後の15日に入国規制を撤廃することなどは日本ではあり得ません。実際、ベトナムに来ていろんな人から話を聞いて、リスクに対する考え方の違いがあるというのを強く感じたのです。

旧正月の2月上旬から急激に感染者数が伸びてきたのは事実です。ただその前にオミクロン株が広がり始めたころから、これは以前のデルタ株のように重傷者はそんなに多くはなく、ワクチンを接種しておれば、罹患したとしても軽症で済むという認識が広まっていたというのです。今年になってからたとえコロナに感染しても、無症状もしくは軽症が人がほとんどなので心配はいらない。ただ、感染のまん延を防ぐ意味で、PCR検査で陽性と判定された人は症状がおさまるまで自宅で療養するので十分、つまりインフルエンザや風邪と同じような対応で特に問題はないという意識が一般的になっていたようです。

しかも、2月の旧正月を機にベトナム国内中で感染爆発が起きたのですが、これはある意味想定された範囲であって、無理やり中国のようにゼロコロナを目指すというものではく、おそらく3月中旬ころから集団免疫が確立して一気に感染者数は激減するのは間違いないであろうと見方があったようなのです。

またベトナムがいつまでも外国人の入国を規制していたのでは経済に及ぼす影響が大きすぎる、ピークを越えた時点で入国規制を撤廃しても開国する方がメリットが大きいと現実的な判断を素早く行ったというのがその背景にあると思われます。

一方、集団免疫と言えども、今までコロナに感染したベトナム人は1000万人程度でした。一方日本では800万人ですので、人口は1億人弱で日本の9割ということからある程度感染スピードは日本より速いとはいえますが、それだけでは集団免疫のレベルには達しないはずです。ところが、多くのベトナム人と話をしますと1000万人のはずがないと言います。実際には届け出をしようがしまいが医療サービスが手厚くなるわけでもなく、風邪と同じように自宅で寝てろと言われるだけですので、結構多くの人が届け出すらしていないようです。

これはあくまで感覚的な割合になりますが、少なくとも私が会って話したベトナム人の関係者の7割から8割は既に感染した人でした。しかもその家族はほぼ全員がかかっているというのです。つまりざくっと推察してベトナム人の7割前後の人が既に既感染者であって、事実上オミクロン株での免疫を持っているがゆえに集団免疫が確立して、急激に新規感染者数が減少しているということが言えるのではないかと思われます。

なお、最新の新規感染者数は、5月7日時点でベトナム全国で3,345人まで減少しています。一方、日本はまだ2万人以上が続いています。今やベトナムの方が遥かに安全なのですが、日本はつい最近までベトナムを感染指定国にしたままでしたので、ベトナムから日本に戻ってきた人に対しても、もちろん陰性証明書も必要ですし、ワクチン3回接種していても、入国者全員に空港検疫でPCR検査を2時間以上もかけて行います。さらに入国後も1週間の自主待機を要求され、その間公共交通機関に乗ることが許されていないのです。欧米、アジアのほとんどが規制撤廃に動く中、日本はあまりにも石橋を叩きすぎていて、日本とは関わる必要のない経済圏がどんどん広がっていくのではないかと危惧を感じるのです。

ようやく岸田総理も6月から外国人観光客にも門戸を広げるという方針を出したようですが、空港での全員検査をやる意味はもうないと思いますし、これを撤廃しない限り1日上限入国者数に制限をかけて航空便数を絞り続ける施策が残ってしまいます。事実上一人も陽性者を入国させないという日本版ゼロコロナ検疫はもう限界ではないでしょうか。

入国規制撤廃直後のベトナムの町の様子

3月15日に入国規制を大幅緩和したとは言え、ベトナム入国にはPCR検査での陰性証明書が必要ですし、日本に戻る前の72時間前までにはベトナムでPCR検査を行って陰性証明がなければ、日本行きの航空便搭乗に拒否されます。もしその時点で陽性となったときにはベトナムで隔離措置が必要となり、改めて陰性判定されてから帰国の段取りとなるため、観光客が自由に往来するにはまだまだ難しさがあります。しかも渡航用のPCR検査証明を取得するには、日本側、現地側ともに結構な検査費用がかかってしまいます。

私がベトナムのハノイに到着したのが4月10日でしたので、まだまだ外国人渡航者が増えている段階ではありません。当日関空からハノイ行きのベトナム航空の搭乗客数は約220名とのことでした。ところが搭乗口に集まってきた人を見ますと、日本人らしき人は非常に限られていました。10数人ぐらいしかいなったように思います。以前はそんなことはなく、だいたい8割は日本人だったように覚えています。今回のほとんどは帰国するベトナム人の技能実習生でした。コロナで帰国手続きが取れず帰れなかったのが理由です。

ハノイ空港に到着し、検疫も健康申告書の入力画面を見せる以外にはほとんどなく、スムースになんと20分ぐらいで到着ロビーに出ることができました。ところがその到着ロビーは黒山の人だかりでっした。何人かは税関検査台のところまで入ってきて、そこで帰国者と抱き合ったり荷物を運ぶのを手伝ったりと、もちろん係官には注意されていましたが無茶苦茶になっていました。ほぼ同時刻にソウルや香港便が到着していたので、技能実習生などを含めたベトナム人の帰国者を出迎える親戚縁者で溢れかえっていました。

この時点で、このままの雑踏に巻き込まれたら危ない! コロナに感染してしまうという恐怖感を覚えたのです。足早に両替してすぐに外に出てGRABタクシーをスマホで呼びハノイ市内のホテルに向かいました。

ハノイ市内に向かう途中の町の様子は2年4か月前とはそう大きく変わっているとは感じませんでした。まあ高層アパートの数が増えているという印象はありましたが、空気は相変わらず悪いので、バイクに乗っているほとんどの人はマスクをしていました。ホテルは市内の中心部ではないのですが、バイクや車の数は以前より多くなっていて交通渋滞がさらに悪化しているというのが第一印象でした。ただ気になったのは、バイクを運転している人は確かにマスクをしていますが、これはコロナとは関係ないと思ったのは、ホテルの周辺のレストランやカフェ、公園周りで散歩している人々は普通にマスクなしなのです。半分以上はマスクをしていませんでした。もうベトナムはウィズコロナに舵を切ったからマスクをする必要がないんだという声を何度も聞きました。

仕事はホテルと研修会場の往復がほとんどで、感染対策の意味からも意識して町をうろうろと歩くことはしませんでした。ただこれだけでは実態がわからないと思い、ハノイでは夕食後、ホーチミンでは日曜日の昼食時にいわゆる観光客が多く立ち寄る通りをタクシーで行ってみたのです。

写真を見ればわかりますが、昼間の写真はホーチミンのレタントン通りです。日曜日の昼12時過ぎです。ほとんど人が歩いていません。もう一つの夜の写真はハノイのリーコックスー通りで、大教会前のいわゆるバックパッカーが夜をたむろしている金曜の夜8時です。今までベトナムを訪問したことがある人にとっては、この通りの様子はあり得ないと思います。

ようやく外国人入国規制を解放したところですので、現時点ではコロナで人の動きを規制していたときの影響がまだまだ残っています。日本大使館周辺あたりの少し郊外になりますと、既に車やバイクの洪水になっており、タクシーもなかなか捕まらない状況に戻っていますが、観光客に依存していた中心部は対比的です。そのあたりの店舗の半分以上がシャッター閉鎖されていて、テナント募集の張り紙だらけの様相です。多くの飲食店や旅行者相手の店舗は潰れてしまったということがわかります。まさしく今の道頓堀といった感じでしょうか。

そういった状況でも日々刻刻と活動レベルが上がってきており、人々のエネルギーをひしひしと受けました。人の通りがほとんど消えているホーチミンのレタントン通りであり、ホアンキエム湖周辺地域でしたが、客引きの声もどんどん大きくなってきたように感じました。

あともう少しです! 皆さん頑張りましょう。