グローバル X デジタル革新が変革の道しるべ
先日発信した動画で、「なぜコロナ危機の今海外経営なのか?」というテーマでお伝えしたのですが、コロナショックによる変革の本質という点から、「グローバルとデジタル革新」の背景について補足したいと思います。
コロナ感染拡大による緊急事態宣言が解消され、新規感染者の数も落ち着いてきた今、人出もほぼ以前のレベル近くまで戻り、徐々に経済活動が再開しつつある状況です。人の接触が感染拡大要因になることから、徹底した外出自粛とともに3密に関わる事業はことごとく営業自粛に追い込まれるだけでなく、人の動きが止まったため、自粛対象でない事業であっても観光や宿泊、飲食、小売やエンタメなどがダイレクトにしかも即影響を受けました。そして、ようやく人が動き出しました。しかし、顧客は元通り戻ってくるのでしょうか? 飲食店の営業が夜8時までの制限から解放されたとしても、今まで通り来客が確保できているところはまずありません。しかもソーシャルディスタンスの対策が求められるため、座席間隔を広げると客数にも上限制限が出てきます。劇場や映画館も同様です。立ち見が出るようなイベントなどは開催自体が無理です。つまり経営面で考えると、物理的に損益分岐点を超えない業界の行く末は悲惨な状況になると思われます。
今はローカル個人需要を集客することで成り立っていた業界、いわゆる商圏を限定した地域密着型のローカルビジネスは大変な状況で、経営が元通りになることがほとんど期待できないということは、たとえ休業補償の補助金や貸付、持続化給付金などカンフル注射を打ったとしても、このまま何もしないと間違いなく倒産、廃業する事業者が急増していくとみています。これは政府がカネを支援してもどうにもなりません。世の中の市場構造が明らかに変質したのです。この変化にビジネスモデルを変革しないと生き残れない現実をいかに認識できるかということが求められます。
コロナショックによって世の中がどう変わったのか
飲食業や小売り、旅館などはいわゆる中小事業者が多いため、今の政府対応はこういった中小規模の事業者をどう支えるかに焦点が当てられています。しかしグローバルに需要が縮小し、人の往来が止まっているので、世界の経済縮小のインパクトはこれから大きな津波として押し寄せてきます。日本経済を支えてきた自動車、電機産業の苦境は既に表面化してきています。世の中が大きく変質したということは、今までの商品・サービスでは通用しなくなっているのです。今の事業ドメインと組織、人材、財務では生き残れないということに多くの企業経営者は気づいています。気づいていないのは政治家とメディアだけです。TVも今までと同じ番組づくりをしている限り、スポンサーがつなかくなり、発信する情報も非常に低俗で偏向しているので、ビジネスモデルが成立しなくなっています。
そもそも日本人は元来変化を嫌う国民性を持っています。外部環境の変化に合わせて自ら変わることに恐れる人が多く、チャレンジ精神をなくしてしまったことでこの危機にすら気づいていない、コロナ問題に対応できないのは自分に責任があるのではなく、政府の支援のスピードややり方に責任があると考える国民が多いのです。
これから起きる津波はリーマンショックレベルではありません。自動車、電機メーカー、建設、エネルギーなど基幹産業がバタバタ倒れる状況をどこまで想定されているでしょうか。日本経済にとって屋台骨でもある基幹産業でも、売上半減が続くとそう遠くない将来確実に経営危機を迎えます。事業構造の再編、リストラが待ったなしになります。残念ながら大幅な人員削減は避けられません。基幹産業の大手企業が倒産すると、裾野産業の連鎖倒産が深刻な状況になるのです。まさかそこまで悲惨なことは起こらないだろうと考えている経営者や従業員も多いと思います。
でも私はあえて問いたいのです。そこまでは起きないという考える根拠は何ですか? ほとんどの企業は既に大幅に売上が落ちています。4-6月の企業の景況判断指数では、大企業で▲47.6、中小企業で▲61.1まで落ち込んでいます。この状況で企業が何もせずに景気が回復するまで待っているという選択肢はありません。事業再編、人員整理に踏み込まなければ企業として存続は望めないのです。公務員や大企業の従業員にとってはまだ収入が減っているのではないので実感はあまりないと思いますが、今後夏のボーナスを皮切りに相当数の収入落込みが顕著になってくるばかりか、まずは非正規社員の雇止めから失業問題が深刻になってくるでしょう。
コロナショックを生き残るためのキーワード
外出自粛によってテレワークが拡大しました。しかしテレワークができるのは大企業ぐらいで、中小企業の多くから聞こえてきた声が、「うちはテレワークできない現場の仕事が中心なので無理」というものでした。確かに、対面で商品・サービスの価値を提供している事業にとっては、リモートで商品を提供できるわけがないということもわかります。
しかし、世の中は激変したのです。ニーズも顧客も競合も全て変化したのに、自分は変わらなくて生きていけるでしょうか?
「うちはITができる人はおらんし、商品の品質で勝負して評価されてきたんだから、本物を求める得意先に支えられてきたので大丈夫。お客さんのためだったら何でもやるよ、その理念と姿勢が一番大事なんだから・・」
なるほどですね。でも私は申し上げたいのです。「今までのお客様自身がいなくなったのですよ。実際には企業としてはまだ潰れていないとしても、今までの同じやり方で商品を買っていただけるお客様ではなくなった、今までのお客様だけでは経営はもたないという現実が見えていますでしょうか?」
つまり日本という狭い市場、業界というローカル型産業で、かつアナログ価値を提供するビジネスはもう退場させられるのです。過去栄光を極めた「日本式経営」の強みが、インターネット革命によってデジタル価値の国際競争で通用しなくなってきていたところに、今回のコロナショックが一層急加速させたということになります。この変化に追随できない国、産業、国民は徹底的に富を他の国や企業に奪われてしまう現実に、このような状況になってもまだ気づかないのでしょうか? テレワークはできないとか必要ないという段階ではありません。
まさに今後生き残るためのキーワードは、「グローバル X デジタル」革新です。
グローバル X デジタル革新の本質とは
以前からAIやIoT、Internet4.0への対応が叫ばれていました。GAFAの急速な事業拡大や中国のネットビジネスを目の当たりにする一方で、日本のIT化の遅れが国際競争力の低下につながっていることが懸念されていました。この状況下でコロナショックがより日本経済の凋落を鮮明にしたと思います。
持続化給付金など政府からの補助金や支援金の給付の遅れや委託事業の構造が政治問題化していますが、結局はっきりしたのは、政府や自治体はじめITインフラの決定的な遅れでした。あまりにも行き過ぎた個人情報保護絶対主義の国民意識が、マイナンバーカードと口座の紐付けを許してこなかったゆえに、いろんなところで公的機関の生産性の低さにつながっています。一方、企業にとってもテレワークをやむを得ず導入しなければならなかったことで、改めて気づいたのが同じような仕事の無駄であり極めて低い生産性、一人あたりが生み出す付加価値の低さでした。いかにデジタル革新ができていなかったということに愕然とした企業が多かったのですが、デジタル対応をしてこなかったことが競争力を失ったということすら気づいていない中小企業も多いことが明らかになりました。
デジタルトランスフォーメーションは、企業活動の全てをオンラインでデジタル対応しないと生き残れないことの理解から始まります。
人と人の関係づくりから始まる営業の基本が根底から変わりました。営業機能が激変したのです。取引先の営業社員と会って話を聞きたいと思う顧客は今はほとんどいません。逆に訪問すること自体迷惑とされる時代になりました。かといって営業社員はいらないのかといえばそんなことしていると商品が売れずに会社がつぶれるだけです。つまり売るための営業機能が顧客が求めるデジタル情報をタイムリーに提供することに変化したのです。
オフィスもテレワークの推進で機能が変わってしまいました。毎日通勤に時間をかけて集まって、オフィスで事務処理をすることの意味はあまりなくなってしまったのです。ハンコを押すために出勤しなければならないというのは完全に笑い話です。営業も事務もオフィスが必要ないということを知ってしまったのです。
また商圏という概念も変わってしまいました。私自身のコンサルティング事業でも、物理的な移動時間やマンパワーの点から、顧客は基本的に関西圏を中心にサービス提供していました。もちろん関東の方でも仕事はありますが、そのたびに新幹線で出張しなければなりません。ところが企業支援コンサルティングや研修提供も、リアルからデジタルオンライン化対応することによって、顧客の地域性は全く関係なくなりました。海外顧客との連携も出張なしに進めることも可能となりました。一般の企業でも、営業拠点や製造拠点の設置場所に依存した顧客開発や販路確保、マーケティング戦略の実践、決済、モノづくりを通じたリアルの事業活動と最適な組織戦略の構築に注力してきました。
しかし、デジタルトランスフォーメーションによる変革は、今までの常識を根底から覆しました。商圏は地域・顧客密着から広域対応が可能に変化し、さらに国内ビジネス中心からグローバル取引が可能となっていきます。これはデジタル技術がグローバルネットワーク化を可能とするために、人、モノ、カネの経営資源がなくても、ネットワーク力さえあれば世界を相手に戦えるのです。これはコロナショックによるチャンスでもあるといえます。
この商圏のグローバル化とともに、商品・サービスの提供をリモートで行うオンライン・デジタル対応が革新の基本となります。営業も製造も経営管理も、購買も、バックオフィスも、商品開発も、物流も、財務も・・・ありとあらゆる企業活動がシームレスにリアルタイムで情報共有化され、付加価値を作り上げていくことが可能になりました。IT化が重要だと言われ続けてきましたが、それは単に情報処理をITで行って結果を出力してプレゼン資料を作り、意思決定の迅速化につなげるというレベルでは負けます。リアルタイムに組織を超えて、プロジェクトごとにまた仕事単位ごとにチームでコラボワークで結果を出していく、その結果を即時顧客と共有して、顧客とのコラボでより価値を高めていく、そしてその商品・サービスをあらゆる現場とリアルタイムで共有し生産性を究極まで高める、これを加速させないと企業自身は生き残れないのです。
そうしたら、グローバルにも展開できないローカルな地域密着を基盤とした商店や飲食店、観光産業はどうしたらいいのかという疑問が出てきます。人を集められないエンタメ業界はどうすれば良いのかと言われます。結論から言えば、何もしなければ倒産するだけということです。リアルな箱である商店や飲食店に客に来てもらって販売するビジネスモデルのままでは死にます。コロナショックが来る前でも、なぜこれほど商店街に客が来なくなりシャッター商店街があちこちに生まれてしまったのでしょうか? 商店街のビジネスモデルはいわゆるバンドワゴン効果によって、競合も含めて多くの商店が結集することで、競争によって顧客にとっての利便性が生まれそれが集客増につながっていたのです。しかし少子化による地方の過疎化に指を咥えている間に、待ちのビジネスモデルではどうにもこうにもいかなくなったわけで、そこにコロナショックによるデジタルトランスフォーメーションが加速し、地域にあるお店でないと物が買えないということは完全になくなってしまいました。
それではどうすれば生き残れるかということですが、「デジタル対応力を身につけて、商圏を超えて顧客を追っかけろ」「デジタルの利便性を提供して顧客に課金できるビジネスモデルをつくれ」に尽きます。パソコンできない、ホームページもない、海外から仕入れたり越境ECなど考えたことない、キャッシュレス決済など手数料がかかるからやってない・・・これでは救いようがありません。昔のタバコ屋や駄菓子屋のように、店番さえしていれば現金払いのお客が来てくれるという時代はずっと昔に終わってしまっています。
世の中はグローバルに激変しています、しかもオンラインデジタル化がそれを加速しているのです。コロナショックは危機であると同時にビッグチャンスでもあるのです。