ベトナムはロボットコンテストで優勝常連
ABUアジア放送連合が主催する大学生が製作したロボットによる競技会があります。1988年にNHKが主催した高専ロボットコンテストが始まり、1991年にNHK大学ロボコンが開催され、1993年、NHK大学ロボコンにタイの大学が参加するようになったのを皮切りに次第にアジア太平洋各国が参加するようになり、2002年アジア太平洋放送連合が主催するABUロボコンとして生まれ変わっています。NHKが地上波で放送するため、一般への認知度が高いロボット競技会の一つとなっています。実は、このABUロボコンではベトナムの大学が優勝常連校となっていることをご存知でしょうか。
日本代表は東大や東工大など一流大学ですが、今年の大会は先日27日に日本で開催され、アジアの強豪を蹴散らし、またもやベトナム代表のラクホン大学が優勝に輝きました。ベトナムの技術力は着実に上がっています。ましてロボット技術という今後の第4次産業革命をけん引する分野で、世界を席巻すると思われていた日本のロボット技術はもはやベトナムにキャッチアップされるという時代が目の前に来ているのです。
ベトナムのロボコンでの実績
第1回 2002年 東京大会 優勝 ◎ ホーチミン工科大学
第2回 2003年 バンコク 優勝 タイ スワンデンディン技術専門学校
第3回 2004年 ソウル 優勝 ◎ ホーチミン工科大学
第4回 2005年 北京 優勝 東京大学
第5回 2006年 KL 優勝 ◎ ホーチミン工科大学
第6回 2007年 ハノイ 優勝 西安交通大学
第7回 2008年 プネ 優勝 西安交通大学
第8回 2009年 東京 優勝 ハルビン工業大学
第9回 2010年 カイロ 優勝 電子科技大学 準優勝 ◎ ラクホン大学
第10回 2011年 バンコク 優勝 タイ トゥラキット・バンディット大学
第11回 2012年 香港 優勝 電子科技大学 準優勝 ◎ ラクホン大学
第12回 2013年 ダナン 優勝 金沢工業大学 準優勝 ◎ ラクホン大学
第13回 2014年 プネ 優勝 ◎ ラクホン大学
第14回 2015年 ジョグジャカルタ 優勝 ◎ フンイェン技術師範大学
第15回 2016年 バンコク 優勝 マレーシア工科大学
第16回 2017年 東京 優勝 ◎ ラクホン大学
全16回中、優勝6回、準優勝2回と、最近数年では常にベトナムの大学が上位に顔を出しています。とりわけ今年の優勝校で躍進著しいラクホン大学というのは、ホーチミン市近郊のドンナイ省にある大学で、周囲にはロンドウック工業団地など大規模な日系工業団地も多いところです。ただ、ホーチミン市からは少し離れているので、高級人材の採用には苦労されているのですが、こういった優秀な技術系大学から人材を地元で確保できれば大変優位な事業展開となります。最近ではドンナイ省による日本企業誘致でも、ラクホン大学がある省ということを強調されることが多くなってきました。
ベトナムの潜在力の高さと日本技術の危機感
ロボコンのような技能コンテストに関心のない方にとっては、日本企業が置かれている危機についてはなかなか感じることができないと思います。日本の中小企業の声を聞く限りは、日本のモノづくり力は断トツである、品質の高さや技術力は世界でも一流、AIやロボットを活用して先端技術を応用する力は素晴らしい、日本製品は高くても物が良いから輸出でも十分通用するというものが大半です。
中小企業の海外展開に関する相談においても、商品は素晴らしいもので、世界に負けない技術と日本人の勤勉さで十分競争力はあるのだから、絶対に海外でも売れるのは確実。でも販路がないので、優秀な代理店を紹介してほしいというものが多いように思います。偏った考えで変に商品に自信をもっておられると、海外の顧客の声に対して素直に耳を傾けことができなくなります。商品仕様も現地に合わせて変えない、仕様書も翻訳しない、ラベルも商品名もパッケージも日本語のまま、しかも為替リスクを持たず、円建て固定で取引してくれて数量をロットでコミットしてくれる代理店を紹介しろというものです。
もっと海外に目を向け、自社製品のレベルを公平な目で評価する姿勢が必要です。本当に日本の技術力が圧倒的に優位であるのなら、なぜロボット技術応用コンテストであるロボコンで日本のトップ大学がベトナムに負けるのでしょうか。ロボコンは毎年行われてすでに16回を数えます。そのうちで日本の大学が優勝したのはたったの2回という現実、これはいったいどう考えればよいのでしょうか。アジアでロボット技術の先端国は、ベトナムの他には中国やタイ、マレーシアといえるでしょう。日本とともに韓国やインドなどもロボットの世界では立ち遅れているといっても良いでしょう。
ロボコンでの技術は今や特殊分野ではありません。AIやIOTの中核技術です。この分野で立ち遅れることは将来技術立国として大きく立ち遅れる危機感を強く感じるのです。