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ベトナム人技能実習生の失踪者が増加する本当の理由

外国人雇用を増やす入国管理法改正案が国会で成立しました。特定技能という新しい在留資格制度導入を柱とし、長期の外国人労働者を活用していく法律が施行されます。平成29年10月現在の統計では、現在外国人労働者は128万人、うちベトナム人は24万人と全体の18.8%と中国の37万人に次いで2番目に多くなっています。しかも、前年対比ではなんと40%増と急激に増えています。

ベトナム人労働者24万人の内訳は、約半分の10万5千人が技能実習生で、留学生のアルバイトがほぼ同数の10万1千人、この二つの在留資格で大半を占めています。他に専門的・技術的分野の在留資格として、「技術・人文知識・国際業務」のカテゴリーで労働許可を得ているベトナム人労働者が、全外国人で18万人中の1万8千人という状況です。

「技能実習生」「留学生(アルバイト)」「技・文・国」の三つの在留資格で多くのベトナム人労働者が急増しており、日本経済の基盤を支え、特に中小企業にとってはなくてはならない貴重な労働力になっています。

ベトナム人失踪者の増加は低賃金が理由?

これだけ外国人労働者が増えてきますと、不法滞在者つまり在留資格で許可された職以外に就いたり、在留期限を超えて失踪してしまう労働者も右肩上がりで増加中です。特に技能実習生の失踪者問題が国会で取り上げられていました。平成30年7月時点で技能実習生の不法残留者数は7814人ですが、厚労省が集計している技能実習生の失踪者数というのが平成29年度で7089人と、前年の5058人から急増しています。うち、ベトナム人は3751人と失踪者の半分以上を占めます。

国会で技能実習生の失踪理由について突っ込んだ議論がなされ、その理由の一番が「低賃金」というのです。そして職場環境や職場での人間関係などが続きます。留学生のアルバイトは基本的に職業選択の自由があるので、不法滞在はあっても、失踪というカテゴリーにはカウントされません。しかし技能実習生には実習企業を変える自由がないため、失踪という言葉からは止むにやまれず、ひどい雇用者の扱いから逃げ出したという側面しか取り上げられません。

確かに、実習生を受け入れる企業側にも労務管理が十分でなく、劣悪な職場環境や残業代の不払いなど非難されるべきところが多いと思います。そもそも技能実習生を受け入れる資格がないような企業や職場に対しては、もっと選別をきちんとして淘汰されるべきです。しかし、失踪者が増える本当の理由を理解しないと、失踪者増加問題に適切な対応ができません。

そもそも技能や勉強するための来日ではない

外国人技能実習制度や留学生拡大の国の施策は、発展途上国の人材育成に資するための国際貢献という目的で進められているにもかかわらず、実態として日本の非熟練労働者の受け皿として機能させている産業界のニーズに対して、本音のところで国が支援していることをまず理解しなければなりません。ここのタガを外すと、一気に移民国家として舵を切ることと同じになってしまう懸念から、今回の入管法改正においても本音と建て前が交錯しているがゆえに、国会審議でも煮え切らないものになっていたのです。

一方、ベトナム人を始めとする外国人にとっての技能実習生や留学生の資格で日本に来るのは、真に技能や学問を学ぶために来ている人は少数であり、大半のベトナム人はいわゆる「出稼ぎ手段」として活用しているにすぎません。

「低賃金」が失踪の最大原因のように言われていましたが、実際技能実習生にとっては、たとえ最低賃金での条件あったとしても、ベトナムで働くより何倍もの収入を得ることができるのです。特に地方から来る労働者にとってはその収入差は数倍に及びます。結果として3年技能実習を通じて得られる収入で立派な家が建つくらいなのです。

つまり彼らにとっての最大の目的は、「いかに稼ぐか」の一点に尽きます。技能実習先やアルバイト先は、あくまで稼ぐための場でしかないと考えている本質を見抜く必要があります。「低賃金」の不満が失踪原因というのは、待遇が劣悪からだと短絡的に考えては間違えます。例えば、働き方改革を徹底して進めている企業が、残業の上限をきっちり順守し、いかに残業をしないで効率を上げていくかということに取り組んでいる場合、技能実習生にとっては残業代を稼げなくなる「低賃金」の不満につながるという側面もあるのです。

過酷な職場環境は問題外ですが、残業が少ないという職場は、彼らにとって「低賃金」を理由に失踪する原因になっているのです。つまり失踪者が増加しないように取組むというのは、決して給与ベースを上げてやるとか、加重労働にならないよう残業規制したり、もっと技能を勉強してもらってモチベーションを高めるというレベルの問題ではないことに気づくべきなのです。

失踪者の増加を防ぐためには最終年度が要注意

基本的に彼らを技能実習生や留学生という視点で労働管理するだけでは不十分で、「短期の出稼ぎ労働者」という視点に立っての人事労政のしくみに留意する必要があります。

特に重要なのは、技能実習生または留学生としての最終年度の彼らの生活態度に注意を払うことです。彼らはあくまで出稼ぎに来ているのです。技能実習や学校が終われば、自動的に在留資格を失いベトナムに帰らねばなりません。実習生や留学生の全員が、実習や留学をやり終えた充実感をもってその期限ですんなり帰国する人ばかりではないのです。

特に帰国期限が刻々と迫る最終年度には彼らはいろんなことを考えます。本音は「もっと日本で稼ぐことができれば田舎の両親に楽をさせてあげられる」ということです。制度だから、不法滞在にはなりたくないから、といって帰国するのが当たり前とは考えていません。特に、昨今の技能実習生や留学生は地方出身者の数が増えており、以前に比べて出稼ぎを目的としてきている人の割合が高まり、実際のところ人の学習能力レベルは以前より低下しています。

こういったときに、ベトナムで不法滞在しているよからぬベトナム人から、SNSを通じていろんな誘いがあるのです。どうせ帰らないといけないのなら、不法滞在になったとしても摘発されるまで少しでも他の仕事で稼ぎたいという心理が働きます。普通の企業は不法滞在者を雇用することはできませんし、それがバレますと社会的制裁も受けます。昨年、大阪にある博多ラーメン店が摘発されました。留学生をアルバイトで雇用していたのですが、そのベトナム人留学生が学校を退学していたために不法滞在となっていた確認を怠っていた、という雇用者側の責任として処罰を受けたのです。不法滞在を承知で働ける職場というのは限られており、中には知らずの間に犯罪集団の仕事に巻き込まれて犯罪者となってしまうケースもあるのです。事実、最近のベトナム人の刑事犯罪の摘発件数も急増しています。

失踪者が増加しているとは言え、現時点では技能実習生26万人中、失踪者が7千人ですので全体の3%以下です。不法滞在者が3%というのは多いかどうかについてはいろんな見方があると思いますが、今後確実に技能実習生の数が増えていくにつれ、出稼ぎのみの動機を持った貧困地域からの出身者比率が増加します。失踪の抵抗感が少ない教育訓練されていないレベルの低い人材が増えていくのが容易に想像できます。

ベトナム人労働者を活かす事業展開と労務管理

これらベトナム人とどう接し、どう教育していけば良いのか。
失踪者を増やさないためにどのような労務管理をすれば良いのか。
ベトナム人材をどのように活用すれば企業の成長発展につなげられるのか。

多くの企業からお悩みを頂戴するようになってきました。

私は今まで中小企業の海外展開、特にベトナムへの事業展開支援を中心にコンサルティングしてまいりましたが、その中でベトナム人の国民性や労働観の理解がいかに重要かについてお伝えしてきました。同時に、日本で事業を継続発展していく企業にとっても、ベトナム人労働力をいかに活用するかが更に重要な経営課題となってきています。

個別に企業からのご相談をお受けしていきたいと考えています。